信教の自由を巡る闘争 - 旧統一教会と地方自治体の決議に対する人権擁護の訴訟

信教の自由を巡る闘争 - 統一教会地方自治体の決議に対する人権擁護の訴訟

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徳永信一弁護士は、旧統一教会に対する地方自治体の決議を重大な人権侵害と位置づけ、2023年12月から富山地方裁判所大阪地方裁判所(富田林市・大阪市対象)、大阪府北九州市を相手に5つの裁判を提起した。
問題の起点は、2022年9月28日に富山市議会や富田林市議会が「旧統一教会のような反社会的団体と一切関わりを持たない」と決議し、その後大阪市大阪府北九州市が同様の措置を取ったこと。これらの決議は、日本国憲法第19条(思想・良心の自由)、第20条(信教の自由)、第21条(表現の自由)を侵害し、旧統一教会の信者や関連団体に対する「宗教的ヘイト」と「名誉毀損」を引き起こしていると徳永弁護士は主張する。
人権侵害の具体的内容
  1. 信教の自由への侵害
    • 日本国憲法第20条は「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する」と規定し、宗教活動への不当な干渉を禁じている。しかし、自治体の決議は旧統一教会を「反社会的団体」と一方的に決めつけ、関係断絶を宣言。これにより、信者が自由に信仰を実践する権利が制限され、宗教団体としての活動が抑圧されている。
    • 徳永弁護士は、国際連合の「宗教または信念に基づくあらゆる形態の不寛容および差別の撤廃に関する宣言」(1981年採択)を引用し、宗教的理由での差別的扱いが国際人権基準でも明確に禁止されている点を強調。決議は「病原菌扱い」のような排除的表現を用いており、信者への精神的圧迫を強めている。
  2. 名誉権と精神的苦痛
    • 決議は旧統一教会を「反社会的」と断定し、根拠を示さず名誉を毀損。これにより信者や関連団体(例: UPF大阪)は社会的な信用を失い、精神的苦痛を被った。民法第709条(不法行為)や第710条(精神的損害の賠償)に照らせば、この損害は補償されるべきであり、裁判では慰謝料請求が含まれている。
    • 特に大阪地裁では、原告であるUPF大阪に対する「宗教的ヘイト」が争点化。裁判所は自治体側に「反社会的団体」の証拠を求めているが、徳永弁護士は立証が困難と予測し、根拠なきレッテル貼りが人権侵害の核心だと訴える。
    • 決議は旧統一教会関係者を一律に排除する姿勢を示し、国連人権規約第26条(法の下の平等と差別禁止)に反する差別的扱いとなっている。徳永弁護士は、平和大使協議会大阪などの地道な地域活動(道路清掃や平和議論)が無視され、全ての関係が断絶された事例を挙げ、集団的烙印が個人の尊厳を踏みにじっていると批判。
裁判の目的と人権保護の意義
裁判では、①決議の取り消し、②人権侵害による精神的苦痛への慰謝料を求めている。徳永弁護士は憲法学者として、立憲主義の基盤である人権保障が崩れる危機感から行動を起こしたと説明。日本国憲法第11条(基本的人権の享有)に基づき、宗教団体への不当な攻撃が「白昼堂々とまかり通る」状況は許されないと主張する。また、2022年7月の安倍晋三元首相暗殺事件後、メディアが旧統一教会との関係を誇張し、信者への偏見を助長したことも、人権侵害の一因と見なしている。
進捗と今後の展望
5つの裁判のうち、大阪地裁が最も進んでおり、行政事件専門部が「宗教的ヘイト」の法的整理を進めている。2025年3月13日時点で、裁判所は自治体に反論と証拠提出を求めているが、徳永弁護士は「解散命令請求事件と連動する証拠が乏しい」と予測。これらの裁判は、信教の自由や平等権を巡る先例となり得るため、人権保護の観点から注目される。徳永弁護士は、信者の窮状を利用する葛藤を抱きつつ、人権と立憲主義の回復を掲げ、支援を呼びかけた。
全体の傾向
  • 判決状況: 2025年3月13日時点で、大阪地裁の2件(富田林市・大阪市大阪府)が敗訴・却下となり、控訴段階へ。他の裁判(富山、北九州)は審理中または情報不足。大阪地裁の進行が最も早く、他地域の参考となる。
  • 人権視点: 徳永弁護士は一貫して「信教の自由」「名誉権」「平等権」の侵害を訴えるが、裁判所は決議の法的非拘束性や社会情勢の合理性を重視し、人権侵害を認めていない。信者側は「宗教弾圧」と批判し、司法が世論に流されていると主張。

  • 提訴: 2023年12月16日
  • 概要: 富山市議会の「旧統一教会との関係断絶」決議(2022年9月28日)および市長の発言が宗教的ヘイトに当たるとして、富山県平和大使協議会と信者個人が提訴。決議取り消しと慰謝料を求めた。
  • 判決の現状:
    • 2024年3月時点で、富山地裁では口頭弁論が継続中。次回弁論は2024年5月22日と報じられているが、その後の進展は明確でない。
    • 判決はまだ出ていない可能性が高く、審理中と推測される。徳永弁護士は「名古屋高裁判例に望みがある」と述べており、信教の自由や名誉権侵害の主張を維持。
  • 人権への影響: 信者の名誉感情や信仰実践の自由が公権力により侵害されたとの主張が焦点。判決未確定のため、人権保護の成否は不明。

2. 大阪地方裁判所(富田林市・大阪市対象)
  • 提訴: 2023年12月23日
  • 概要: 富田林市と大阪市の「旧統一教会との関係断絶」決議が憲法違反(信教の自由、請願権侵害)として、UPF大阪が決議取り消しと各350万円の損害賠償を求めた。
  • 判決の現状:
    • 2024年2月28日、大阪地裁(横田典子裁判長)は訴えを却下。「決議は行政訴訟の対象外であり、法的拘束力がないため請願権や信教の自由を侵害しない」と判断。賠償請求も棄却。
    • 原告側は控訴を表明。徳永弁護士は「裁判所が世論に流され、責務を放棄した」と批判し、控訴審で人権侵害の再審理を求める方針。
  • 人権への影響: 判決は信教の自由や名誉権侵害を認めず、議会の意思表明に合理性があるとした。信者側は社会的排除と差別が続くと主張し、人権回復が現時点で実現していない。

  • 提訴: 2024年2月14日
  • 概要: 大阪府の「旧統一教会との活動を一線を画す」決議が宗教的ヘイトと名誉毀損に当たるとし、UPF大阪が決議取り消しと慰謝料を請求。
  • 判決の現状:
    • 2024年3月時点で結審し、敗訴が報じられている(具体的な判決日は不明)。大阪地裁の他の案件と同様、「決議は法的拘束力がない」との理由で却下された可能性が高い。
    • 控訴中か検討中と思われるが、最新情報が不足。
  • 人権への影響: 信教の自由や平等権の侵害が認められず、信者への精神的苦痛が放置された形。徳永弁護士は「宗教差別」と訴えるが、現時点で司法は人権侵害を否定。

4. 北九州地方裁判所北九州市対象)
  • 提訴: 2024年2月21日
  • 概要: 北九州市議会の「旧統一教会との関係断絶」決議が信教の自由を侵害するとし、決議取り消しと慰謝料を求めた。
  • 判決の現状:
    • 2025年3月13日時点で判決情報はなく、審理中と推測される。徳永弁護士は国際規範(国連の宗教差別撤廃宣言)に抵触すると主張し、注目を集める。
    • 他の訴訟の傾向から、却下の可能性もあるが未確定。
  • 人権への影響: 信者や団体の社会的排除が人権侵害に当たるかが争点。判決が出ていないため、人権保護の進展は不明。

5. 大阪地方裁判所(進行中の主要案件)
  • 概要: UPF大阪が原告となり、「宗教的ヘイトと名誉毀損」を争点に自治体を訴えた案件。大阪地裁の行政事件専門部が扱い、他の裁判より進展が早い。
  • 判決の現状:
    • 2023年末に結審し、2024年内に敗訴判決。徳永弁護士は「解散命令請求の影響を受けた」と分析し、控訴理由書を提出する意向。
    • 具体的な判決日は不明だが、争点整理が進み、次回公判で裁判の方向性が明確化する可能性。
  • 人権への影響: 裁判所が宗教的ヘイトを認めず、自治体側の「反社会的団体」主張への立証責任を求めるも、信者側の人権侵害主張は退けられた。控訴審での逆転が期待される。