1. 東京地裁の解散命令決定に対する見解
徳永弁護士は、2025年3月27日の東京地裁決定について、次のように述べた。
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決定の内容と印象: 決定文では宗教法人格の剥奪(解散)が信者の宗教的自由に及ぼす影響に触れているが、その記述は薄いと感じた。裁判所は法人格の付与を「特権的扱い」と位置づけ、不祥事や違法行為があれば剥奪が当然とする立場を取る。しかし、信者の信仰の自由が大きく制約される視点が十分に考慮されていないと指摘した。
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今回の決定との対比: 今回の決定では信者の信仰の自由への影響が軽視されており、オウム判例のような深みのある議論が欠けていると批判した。
3. 判決の問題点と信者の思い
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信者の視点の不在: 特に2世信者の信仰や思いが判決に反映されていないと感じ、どのように配慮されているのかが見えないと指摘した。この責任の一部は教団のあり方にあるかもしれないが、裁判所が信者の声を十分に取り上げるべきだったと主張した。
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メディアの影響: メディアが2世を「被害者」として一面的に扱う傾向に触れ、実際には信仰を保持する多くの2世信者が存在し、彼らの声が無視されている現状を問題視した。信者たちが自身の信仰や生き方について語る場が必要だとアドバイスし、それがこの会見開催のきっかけになったと説明した。
4. 判決文の分析と今後の展望
質疑応答の最後で、徳永弁護士は判決文(約100ページ)を読み込んだ上で次の分析を述べた。
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推定に基づく認定: 判決は「推定に推定を重ねて」問題点を指摘し、「基本的な問題が解決できていない」と結論づけた。しかし、最も重要な部分が推定でつながれており、具体的な事実認定が不足していると批判した。
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教団の対応のまずさ: 文科省からの質問に対し、教団が十分に回答しなかったことが推定の根拠となった可能性を指摘した。教団が過去の失敗や問題に触れることを避けた結果、裁判所が推定で判断したと推測した。
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高裁への希望: この推定の弱点は、高裁での訴訟で事実を提示し覆すチャンスになると示唆した。教団が信者一人ひとりと向き合い、事実を明確に示すことが重要だと強調した。
5. 信者の役割と社会への訴え
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信者の声の重要性: 2世信者が教団や世間に対して本当の思いを伝えることが、裁判の行方を左右すると主張した。判決を通じて、教団のあり方や信者への向き合い方が問われる裁判になるとの見解を示した。
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社会へのメッセージ: 信仰が個人の尊厳やコミュニティの基盤であるにも関わらず、今回の事件で軽視されていることに強い憤りを感じると表明した。2世信者が勇気を持って声を上げることの意義を讃え、彼らの尊厳を認め、社会に共有してほしいと訴えた。
6. 教会が奪われることの意味
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コミュニティの喪失: 解散により教会や宗教活動の場が失われることは、単に個人の信仰が続けられるかどうか以上の問題だと強調した。例えば、震災で家や生活基盤を失った人々の悲しみに共感するように、教会がなくなることの重みを理解してほしいと訴えた。
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人間の中核的価値: 信仰や宗教は人間の尊厳や多様性を支える中核的価値であり、それが軽んじられている現状に危機感を示した。
全体を通じた徳永弁護士の立場
徳永弁護士は、法的専門家として判決の論理的弱点を指摘しつつ、信者の人権や信仰の自由を守る立場から発言した。東京地裁の決定を批判しつつも、高裁での逆転の可能性に希望を見出し、信者たちが積極的に声を上げる重要性を強調した。また、メディアや社会の偏った見方に対しても警鐘を鳴らし、2世信者の思いを広く伝える必要性を訴えた。