宗教法人法のプロ - 櫻井圀郎氏が家庭連合の解散命令を反対する理由

 
櫻井圀郎が家庭連合の解散命令を反対する理由
宗教法人法のプロ : 文部科学省宗教法人審議会委員歴任プロフィール
櫻井圀郎は、宗教法人法と宗教活動の分野で卓越した専門家として知られる。名古屋大学法学部で法律を修め、同大学院で民法を専攻後、東京基督神学校で神学を学び、米国フラー神学大学神学大学院で組織神学を研究。高野山大学大学院では密教学を深めた。東京基督教大学で法学と神学の教授を務め、宗教法学会理事、文部科学省宗教法人審議会委員を歴任。司法書士(1974年合格)、行政書士(1973年合格)として実務に携わり、宗教法および宗教経営研究所の所長教授を務める。東京都神社庁相談役、京都仏教会顧問、日本キリスト教連合会法務顧問など、多くの宗教団体の顧問を担当。著書に『教会と宗教法人の法律』『宗教法人法制の検証と展開』があり、宗教法人法に関する深い知見と実践経験を持つ。この学術的・実務的背景が、家庭連合の解散命令に関する彼のプロフェッショナルな分析を裏付ける。
櫻井圀郎が家庭連合の解散命令に反対する理由を、著作や宗教法人法に関する見解から推測する。
1. 宗教法人法の目的と構造への理解
櫻井は宗教法人法が「聖俗分離の原則」を徹底し、「信教の自由」を守る制度だと強調する。宗教法人は宗教団体そのものではなく、宗教団体の「世俗の事務」(財務管理など)を担う補助的な存在であると主張する。よって、宗教法人の解散命令が宗教団体の活動や信教の自由を直接制限するなら、それは宗教法人法の目的を超える問題とみなされる。家庭連合への解散命令が宗教活動そのものを標的にするなら、「信教の自由」の侵害と捉える可能性が高い。
2. 解散命令の法的根拠への疑問
櫻井の記述(Ⅶ「宗教法人の解散命令とは?」)によれば、宗教法人の解散命令は「公益上の解散命令」や「利害関係人の解散命令請求」といった限定的な場合にのみ適用されるべきであり、厳格な要件が必要とされる。家庭連合への解散命令請求が、公益上の重大な侵害を証明する十分な証拠に基づいているか、あるいは感情的・政治的な動機に左右されていないか、慎重な検証を求める立場を取る可能性がある。特に、解散命令が宗教団体の活動全体を否定する結果となり得る点を問題視する。
3. 新法(寄附の不当勧誘防止法)への批判からの延長
櫻井は『旧統一協会被害者救済新法を解説する』で、2023年に施行された「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律」を批判する。統一教会を名指しせず、あらゆる法人や団体に適用される一般法とした点、拙速な制定過程、不十分な審議を指摘する。この新法が家庭連合への解散命令と関連して運用される場合、法律の曖昧さや過剰適用が宗教活動への不当な干渉を引き起こすと主張する。特に、「霊感商法」などの問題が宗教行為と混同され、すべての宗教団体に不利益をもたらす危険性を警告する。

旧統一協会被害者救済新法を解説する 寄附の不当勧誘防止法 その意味と問題点

4. 信教の自由と個人の責任の重視
櫻井は宗教活動における不法行為の責任が宗教法人ではなく、個々の信者や宗教主宰者に帰属すべきだと主張する(Ⅰ-3「宗教法人の責任」)。家庭連合の場合、高額献金霊感商法が解散命令の理由とされるが、これらが宗教法人の直接的な責任ではなく、個々の行為や宗教団体の内部運営に起因する可能性があると考えるかもしれない。この場合、宗教法人そのものを解散させるのではなく、個別の違法行為に対処すべきとの立場を取る。
5. 宗教団体への誤解と偏見の拡大への懸念
櫻井は、家庭連合への解散命令が他の宗教団体への誤った理解や偏見を助長し、宗教活動全体に悪影響を及ぼすことを懸念する。著作では、特定の団体を対象にした規制が他の宗教法人や伝統的な小規模宗教団体(例: 神社や寺院)に不当な圧力をかけるリスクを指摘する。家庭連合への解散命令が先例となり、宗教法人制度全体の信頼性や自由が損なわれることを避けたい意図があると推測される。
結論
櫻井圀郎が家庭連合の解散命令に反対する理由は、宗教法人法の「信教の自由」保護、解散命令の法的根拠の厳格適用、新法の曖昧さや過剰適用への批判、個人の責任と宗教法人の責任の分離、宗教団体全体への悪影響への懸念に集約される。問題解決には解散命令ではなく、個別の違法行為への対応や法の適切な運用が重要だと考える。