米上院、ジョージ・グラス氏を新駐日大使に正式承認、対中強硬派 - トランプ宗教的自由強化: 家庭連合解散命令反対か
米上院は4月8日、トランプ大統領が次期駐日大使に指名した実業家のジョージ・グラス氏を賛成66、反対32で承認し、就任が正式に決定した。対中強硬派として知られるグラス氏は、トランプ政権の「アメリカ第一」政策を体現する外交官として近く日本に着任する。一方、トランプ政権が推進する「宗教の自由」強化の動きが、日本で物議を醸す世界平和統一家庭連合(旧統一教会、以下「家庭連合」)の解散命令問題に影響を及ぼす可能性が浮上。家庭連合信者への拉致監禁問題も絡み、米国の宗教保守層の意向が日米関係に波及するとの推測が広がっている。
グラス氏の対中姿勢と日米関係の新局面
グラス氏は投資銀行や不動産で実績を積んだ実業家で、第1次トランプ政権下(2017~2021年)に駐ポルトガル大使を務めた。2020年、中国の投資拡大を批判し、「ポルトガルは米国か中国かを選べ」と発言したことで知られる。3月の上院公聴会では、「日米関係は史上最高」と評価しつつ、在日米軍支援の拡大や対日貿易赤字是正を求める姿勢を示した。トランプ政権が日本製品に24%、自動車輸入に25%の関税を課す中、グラス氏のタカ派的な交渉が予想される。
グラス氏は、長男の家族が13年間日本に住んでいた経験を公聴会で明かし、日本への理解をうかがわせた。厳しい経済的要求と協調をどう両立させるかが焦点となる。
トランプ政権の宗教政策と家庭連合問題
トランプ大統領は2月6日、全米祈禱朝食会で「米国に神を取り戻す」と表明し、司法省内に反キリスト教偏見を取り締まるタスクフォースを設置すると発表。副大統領J・D・バンス氏も5日、家庭連合関連の「国際宗教自由サミット」で、「宗教の自由擁護は政権の重要課題」と強調した。このイベントでは、家庭連合の田中富広会長が日本政府の解散命令請求を批判し、米保守層との連携を印象づけた。
日本では、家庭連合が2023年10月に文部科学省から解散命令を請求され、2025年3月25日に東京地裁がこれを認めた。背景には高額献金問題があるが、教団側は「信教の自由の侵害」と反発し控訴を表明。一方で、家庭連合信者約4300人が拉致監禁され強制棄教を迫られたとする「犯罪ビジネス」の被害が裁判で認められており、解散命令に疑問を投げかける声もある。全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)など、共産党系とされる勢力が関与したとの指摘もあり、「中国共産党的な宗教弾圧」との批判が保守層から上がっている。
台湾と中国の対比、米国の立場
興味深いのは、台湾と中国の対応の違いだ。台湾では、統一教会が23年連続で「優良宗教団体賞」を受賞し、社会貢献が評価されている。2023年の台湾・国際宗教自由サミットで頼清徳副総統(当時)は、「独裁体制下では宗教が迫害される」と述べ、民主主義の価値を強調。一方、中国は統一教会を「邪教」に指定し弾圧する。この対比は、日本がどちらの道を選ぶかの試金石ともいえ、米国の宗教保守層は日本の解散命令を「共産主義的」と警戒する。
グラス氏が大使として、トランプ政権の宗教自由重視の姿勢を日本に持ち込み、解散命令見直しを間接的に促す可能性が一部で推測される。米共和党のギングリッチ元下院議長は、「日本の対応は日米同盟を弱め、中国接近を招く」と警告。家庭連合とトランプ支持層の結びつきを考慮すれば、グラス氏の動向が注目される。ただし、現時点で具体的な証拠はなく、あくまで推測の域を出ない。
日米関係と今後の課題