北朝鮮による日本人拉致問題は、1970年代から1980年代に少なくとも17名が拉致された国家主権の侵害であり、未解決の人権問題だ。2024年2月、拉致被害者・有本恵子さんの父、明弘さんが96歳で逝去。家族会の親世代は横田めぐみさんの母、早紀江さん(89歳)のみとなり、時間的制約が迫る。家族会と救う会は石破茂首相に「親世代存命中の全拉致被害者の即時全員帰国」を求めたが、進展は遅い。北朝鮮の金正恩、日本のかつての指導者安倍晋三、米国のドナルド・トランプを中心に、最新情勢を踏まえ、解決への道を分析する。

金正恩は「拉致問題は解決済み」と主張し、2002年に8人の死亡を一方的に通告。日本はこれを認めず、全員帰国を求める。孤立する金正恩にとって、日本の支援は魅力的なカードだが、時間稼ぎや曖昧な提案(例:連絡事務所設置)で交渉を遅らせるリスクがある。
金正恩、トランプ、安倍の役割と歴史
金正恩は北朝鮮の監視国家を統括し、拉致被害者の所在地や状況を把握しているとされる。2018年・2019年のトランプとの会談で拉致問題の存在を認め、2019年ハノイでは安倍との対話準備を示唆(非公式)。しかし、2023年3月、妹の金与正が「日本と話さない」と発言し、交渉は停滞。金正恩は核・ミサイル開発を優先し、拉致問題を取引材料として利用する姿勢を見せる。経済困窮と国際的孤立が深まる中、2025年の米朝交渉で日本の支援を求める可能性があるが、全員帰国を認めない限り進展は難しい。
トランプ:拉致問題を動かす米国の力
トランプは2017年と2019年に家族会と面会し、拉致問題解決を約束。2018年シンガポール、2019年ハノイの米朝首脳会談で金正恩に拉致問題を提起。2019年には金正恩が安倍との対話に前向きな姿勢を示すきっかけを作った。2025年、トランプは再選後、米朝交渉再開を表明し、石破首相との会談(2025年2月)で拉致問題の優先を約束。トランプの動機は米国第一主義であり、北朝鮮の核・ミサイルが米本土に及ぶ脅威を排除することが優先だ。拉致問題は日本の問題と認識するが、安倍との友情や家族会の訴えで関心を持ち、交渉のテーブルに載せる可能性がある。ただし、具体的な人数や状況には疎く、日本側が明確な条件(全員帰国)を提示する必要がある。
安倍晋三は2006-2007年、2012-2020年の首相在任中、拉致問題を最重要課題とした。2006年、拉致解決を「全生存者の帰国」「真相究明」「実行犯引き渡し」と定義。トランプとのゴルフ会談(2017年)では「カートの中で拉致問題しか話さなかった」と語り、トランプに問題の重要性を刷り込んだ。2017年の米朝緊張時には、自衛隊による救出作戦を検討し、米軍の作戦計画(5029)に拉致被害者救出を組み込むよう米国と協議。2018-2019年の米朝会談でトランプが拉致問題を提起した背景には、安倍の執拗な働きかけがある。安倍は2020年に退任したが、家族会との深い信頼関係は今も日本の交渉姿勢に影響を与える。
日本が今すべき行動
全拉致被害者の即時全員帰国を実現するため、以下の行動が急務だ。
結論:時間がない、行動の時
有本明弘さんの逝去は、拉致問題の時間的制約を突きつけた。横田早紀江さんの願いは切実だ。金正恩の孤立とトランプの再始動は交渉の好機だが、成功には石破の決意と国民の後押しが不可欠。安倍の遺志を受け継ぎ、トランプの力を借りて、金正恩に全員帰国を迫る。政治家や官僚が動かないなら、家族会・救う会の運動方針を突きつけ、国民が声を上げる時だ。拉致被害者が故郷の土を踏む日を、親世代が生きているうちに実現しなければならない。
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