ルポライター米本和広氏: 「山上徹也は後藤徹裁判の陳述書を読んでいた」:反統一教会の拉致監禁問題と全国弁連・メディアの隠蔽

ルポライター米本和広氏: 「山上徹也は後藤徹裁判の陳述書を読んでいた」:反統一教会拉致監禁問題と全国弁連・メディアの隠蔽
はじめに
2022年7月8日、安倍晋三元首相を銃撃した山上徹也被告の事件は、日本社会に衝撃を与えた。事件直前、山上がジャーナリスト米本和広氏に送った手紙には、統一教会(世界平和統一家庭連合、以下「統一教会」)への怨恨とその問題を社会に訴える意図が記されていた。
米本氏は反統一教会による統一教会信者への拉致監禁問題を長年追及しており、米本氏はブログ「火の粉を払え」で、「山上容疑者は『後藤徹裁判』の陳述書を読んでいた」と明かし(2022.08.28)、反統一教会側の犯罪性とメディアの隠蔽を批判している。
さらに、ノンフィクションライター福田ますみ氏は、統一教会への解散命令を巡り、全国霊感商法対策弁護士連絡会全国弁連)が「共産党系」の組織であり、メディアと結託して統一教会を不当な宗教弾圧に追い込んでいると指摘する(右向け右、第567回)。
本稿では、山上が後藤氏の陳述書に影響を受けた理由を、米本氏のコメント、福田氏の分析、裁判情報を基に検証し、全国弁連とメディアの隠蔽構造を明らかにする。
山上徹也の動機:後藤徹裁判の陳述書に影響を受けた理由
米本和広氏は、ブログ記事「なぜ、正義の弁護士に相談しなかったのか。」(2022.08.28)で、「事情を知らない一般の人は、山上容疑者はなぜ山口や紀藤などに相談しなかったのかという疑問を抱くはず。実際、なぜ、そうしなかったのか。それは、『後藤徹裁判』のために書いた私の陳述書を、ブログ火の粉を払えで彼が読んでいたからである」と述べている。山上が後藤氏の陳述書に描かれた拉致監禁の実態をメディアに伝えたかった理由は、以下の通りである。
  1. 統一教会と反統一教会への怨恨
    報道では、山上が統一教会へ怨恨があると報じている。しかし、米本氏のブログを通じて後藤氏の陳述書を読んだ山上は、反統一教会側による拉致監禁の非人道性にも怒りを向けた可能性が高い。後藤氏の陳述書は、家族や宮村峻氏による12年5ヶ月にわたる監禁と強制改宗の試みを詳細に記述し、反統一教会側の犯罪性を暴露している。山上が全国弁連の弁護士に相談しなかったのは、米本氏が指摘する「統一と反統一の奇妙な癒着」(2022.08.28)や、拉致監禁に関与する全国弁連の欺瞞性を認識していたためと考えられる。福田氏は、全国弁連が「共産党系」の組織であり、統一教会と敵対するイデオロギー的背景を持つと指摘し、「全国弁連は正義の味方のようになっているけれど、共産党に近い組織なんですよね」と述べている(右向け右、第567回)。この政治的背景が、山上の全国弁連への不信感をさらに強めた可能性がある。
  2. 統一教会問題の全体像の提示
    山上の手紙には、安倍元首相を「統一教会のシンパ」と見なしつつ、「本来の敵ではない」とする記述がある。これは、彼が統一教会だけでなく、反対派や政治との癒着を含む問題全体を問題視していたことを示す。後藤氏の陳述書は、反統一教会側による拉致監禁という知られざる人権侵害を明らかにする。米本氏は、「全国弁連は『正義と人権を振りかざしながら、日本食口の生き血を横から吸うハイエナ』」と表現する(2022.08.28)。山上は、統一教会の過去の献金問題だけでなく、反対派の違法行為も社会に知らしめ、問題の複雑さを訴えたかったと考えられる。
  3. 自身の事件を「正義」の告発として位置づける
    山上の手紙には、「安倍の死がもたらす政治的意味、結果、最早それを考える余裕は私にはありません」との記述があり、彼が事件を通じて統一教会問題に注目を集めることを意図していたことがわかる。後藤氏の陳述書をメディアに伝えることで、拉致監禁の実態を社会に訴え、自身の行動に「正義」の側面を持たせたかった可能性がある。米本氏は、山上がブログ読者として拉致監禁問題に強い関心を持ち、「DD」としてコメントしていたと推測し、「山上を救え」ブログでその動機を掘り下げている(2022.08.28)。山上は、自身の事件を統一教会と反統一教会の双方の問題を告発する契機と位置づけたかったと考えられる。
  4. 米本和広氏への信頼
    米本和広氏は、『我らの不快な隣人』で知られ、統一教会拉致監禁問題を追及してきたジャーナリストである。山上は米本氏のブログにコメントを残すなど交流があり、米本氏は「私の陳述書に対する被告(*宮村峻、松永堡智)の反論はゼロ。私の証人出廷も拒否した。卑怯な奴らだ」と述べ、拉致監禁問題の隠蔽を批判している(2022.08.28)。山上は、米本氏の客観的かつ影響力のある発信力を信頼し、彼を通じて家庭連合信者への拉致監禁問題をメディアに効果的に伝えたかったと考えられる。
後藤徹氏の陳述書:拉致監禁の実態
後藤徹氏の陳述書は、統一教会信者として受けた12年5ヶ月にわたる拉致監禁の経験を詳細に記した文書である。以下はその概要:
  • 監禁の経緯:後藤氏は、家族(兄や母)や宮村峻らによって、京王プラザホテルや荻窪フラワーホームなどに監禁された。監禁中は食事制限、暴行、精神的圧迫を受け、統一教会からの脱会を強要された。
  • 過酷な環境:窓に鉄製シャッターが設置され、南京錠で施錠された部屋に閉じ込められ、40度近い高熱でも病院受診を許されなかった。脱出時には栄養失調と筋萎縮で這うように逃げた。
  • 人権侵害の訴え:後藤氏は、監禁を「拷問」と断じ、信教の自由や基本的人権の侵害として非難。家族や宮村に反省がないことを批判し、裁判所に公正な判断を求めた。


後藤徹氏の裁判:拉致監禁名誉毀損での勝訴
後藤氏は、拉致監禁事件とその後の名誉毀損について、以下の二つの裁判で勝訴している。
  1. 拉致監禁事件の民事訴訟最高裁勝訴確定)
    後藤氏は、1995年9月から2008年2月までの12年5ヶ月にわたり、親族や宮村峻氏、松永堡智牧師らによって監禁され、統一教会からの脱会を強要されたとして、損害賠償を求めて提訴。2014年11月13日、東京高裁(須藤典明裁判長)は後藤氏の主張をほぼ全面的に認め、兄夫婦と妹に総額2200万円、宮村氏に1100万円、松永牧師に440万円の連帯支払いを命じた。被告側は上告したが、2015年9月29日、最高裁第3小法廷(大橋正春裁判長)は「上告理由は事実誤認または単なる法令違反の主張に過ぎない」として上告を棄却。後藤氏の勝訴が確定した(家庭連合NEWS、2015.10.01)。この判決は、拉致監禁が違法な人権侵害であることを司法が明確に認めた画期的な事例である。
  2. 鈴木エイト氏に対する名誉毀損訴訟(一部勝訴)
    後藤氏は、ジャーナリスト鈴木エイトが「やや日刊カルト新聞」(2023年10月)で「12年間に及ぶ引きこもり生活の末、裁判で2000万円をGETした」と記述し、「情報ライブ ミヤネ屋」(2022年8月12日放送)で「ほぼ引きこもり状態」と発言したことが名誉毀損にあたるとして、1100万円の賠償を求めて提訴。2025年1月31日、東京地裁(一場康宏裁判長)は、これらの発言が「原告の行動の自由が違法に制約されていたので、引きこもりではなかった」「原告の社会的評価を低下させる」として名誉毀損を認定し、11万円の賠償を命じた(産経新聞、2025.02.03)。鈴木は控訴の意向を示し、「原告の主要な主張は全て棄却されており、こちらの勝訴」と主張したが、後藤氏も控訴を表明し、「私は12年5カ月におよぶ監禁被害の間に自死を考えるほど苦しみ、最高裁で監禁の事実が認められた。鈴木の『引きこもり』発言は誹謗中傷」と述べた。鈴木氏の代理人全国弁連の弁護士であり、反統一教会側の関与が指摘されている。
全国弁連とメディアの隠蔽:福田ますみ氏の指摘
山上の事件後、統一教会は大きく報道され、2025年3月に文部科学省が教団への解散命令請求に踏み切った。しかし、反統一教会側による拉致監禁問題は、メディアでほとんど取り上げられていない。後藤氏の陳述書や最高裁勝訴判決は、拉致監禁が日本の刑法(逮捕・監禁罪、第220条)に該当する違法行為であることを示すが、この事実は広く知られていない。米本氏は、全国弁連の弁護士が示談交渉で高額報酬を得る一方、拉致監禁の実態を隠蔽していると批判し、「マスコミ大好き、宮村御用達の紀藤正樹弁護士はかなり稼いでいた」と述べ、反統一教会側の金銭的癒着を暴露している(2022.08.28)。元全国弁連の伊藤芳郎氏は、「宮村氏は高額事件を特定の弁護士だけに回す」「損害賠償請求が新たな被害者を生む」と内部矛盾を指摘している(米本和広、2022.08.28)。
福田ますみ氏は、全国弁連が「共産党系」の組織であり、1987年の結成時に統一教会関連団体のスパイ防止法制定運動を阻止する目的で設立されたと指摘する(右向け右、第567回)。また、メディアが全国弁連と「完全にタッグを組んで霊感商法のキャンペーン」を展開し、統一教会を不当な宗教弾圧に追い込んだと主張する。(右向け右、第567回)。この全国弁連とメディアの結託は、拉致監禁問題の隠蔽を助長している。
メディアの偏向は、拉致監禁に関与した人物を積極的に出演させる点でも顕著である。全国弁連紀藤正樹弁護士や、ジャーナリストの鈴木エイトは、統一教会批判の専門家としてテレビや新聞に頻繁に登場する。しかし、紀藤は拉致監禁に関与した疑いが指摘され、鈴木は後藤氏に対する名誉毀損で敗訴した。鈴木の代理人全国弁連の弁護士であることも、反統一教会側の構造的な関与を示唆する。やや日刊カルト新聞(2014.11.13)では、鈴木が後藤氏の控訴審判決を取材する様子が報じられたが、統一教会側の「勝訴」を揶揄し、被告側支援者のコメントを強調するなど、偏った視点が伺える。こうした報道姿勢は、拉致監禁の被害者である後藤氏の声を封じ、反統一教会側の犯罪性を隠蔽する結果を招いている。
結論
米本和広氏が明らかにしたように、山上徹也は「後藤徹裁判」の陳述書を読み、反統一教会による拉致監禁の実態をメディアに伝えたかった可能性が高い。その理由は以下の通りである:
  • 統一教会問題への怨恨が、教団だけでなく反統一教会側の拉致監禁にも向けられた。実際、拉致監禁犯罪ビジネスに関与した全国弁連弁護士には山上は事件後、相談しなかった。
  • 統一教会の双方の問題を暴露し、社会に問題の全体像を提示したかった。
  • 自身の事件を「正義」の告発として位置づけ、統一教会問題への注目を喚起したかった。
  • 米本和広氏のブログや過去の交流を通じて、彼が拉致監禁の実態を効果的に発信できると信頼していた。
山上の行動は法的・倫理的に絶対許されない。しかし、後藤氏の陳述書と最高裁勝訴判決が示す拉致監禁問題は、信教の自由と人権の観点から重要な議論を提起している。後藤氏は鈴木エイトに対する名誉毀損訴訟でも一部勝訴したが、メディアは反統一教会の犯罪性を隠蔽し、紀藤正樹や鈴木エイトを「正義の味方」として出演させ続けている。鈴木の代理人全国弁連の弁護士であることも、反統一教会側の構造的な問題を浮き彫りにする。福田ますみ氏が指摘するように、全国弁連とメディアの結託は、統一教会への不当な宗教弾圧を助長し、拉致監禁の実態を覆い隠している。米本氏のコメントが示すように、拉致監禁の実態を直視し、公正な議論を進めることが、今、日本社会に求められる。

youtu.be