
2012年7月18日、東京地方裁判所に提出されたルポライター米本和広氏の陳述書は、元全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)の伊藤芳朗弁護士の証言を通じて、この闇を暴露した。
伊藤氏は、宮村峻氏が違法な拉致監禁を実行し、紀藤正樹弁護士が高額な献金返還請求事件とメディア出演の機会を独占していたと「陳述書」で告発。自身は「拉致監禁ビジネス」に反対したが、紀藤氏らの抵抗で排除された経緯を明かした。宮村氏は後藤徹氏の民事裁判で敗訴し、2015年に最高裁で賠償命令が確定。
以下、拉致監禁と金銭搾取の実態、紀藤氏へのコメント、伊藤氏の闘い、そして宮村氏の敗訴を詳述する。
伊藤芳朗弁護士の「陳述書」:拉致監禁ビジネスへの抵抗
伊藤芳朗弁護士(1960年生まれ、1987年弁護士登録)は、1987年から全国弁連のメンバーとして統一教会の被害相談に関与。1991~1993年の「青春を返せ訴訟」では、59名の元信者の代理人を務めた。しかし、宮村氏の拉致監禁と金銭搾取、紀藤氏の不透明な関与に異議を唱え、2004年のホーム・オブ・ハート事件を機に全国弁連から排除された。2012年の陳述書で、伊藤氏は「拉致監禁ビジネス」の違法性と倫理的問題を詳細に証言。内部批判や改革を通じて腐敗に立ち向かったが、孤立したと述べる。
宮村峻の拉致監禁:犯罪的手法の常態化
伊藤氏の陳述書によれば、宮村氏は統一教会信者の脱会を強制するため、以下のような違法行為を常態化させていた:
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隠蔽のマニュアル:「警察への対応も、マニュアル化されていて、警察が関わってくるようなことが発生したら、これは『親子の話し合いだ』と突っぱねろ、と」(同)。
伊藤氏は、これらが「逮捕監禁罪」に該当すると断言。元信者や牧師(杉本誠氏、川崎経子氏ら)からの情報で、宮村氏の暴力性と違法性を確認した。
金銭搾取の仕組み:水茎会の不透明な資金
宮村氏は、統一教会信者の親が集まる「水茎会」を主宰し、以下のように金銭を搾取していた:
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勉強会と支援金:「ある父母は『まだまだ勉強が足りないと、最低でも5年間を待たせるんです。毎月1万円、5年間で60万円も払うのです。脱会に成功しても協賛金といった名目でお金を払わなければならない』」(2.(4))。
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推定収入:「当時概算した結果、大体毎月300万円くらいの金額を宮村氏は得ていることがわかりました」(同)。
伊藤氏は、この構造を「脱会活動に名を借りた金儲け」と批判。「私は山口広弁護士に対して、『一緒に(反統一教会)運動をする上で、会計が不明朗だと後々問題になるかも知れないから、宮村さんに会計報告を求めた方がいいのではないか』と話し、会計報告を求めました」(2.(4))。
紀藤正樹弁護士:高額案件独占とメディア出演
紀藤氏は、宮村氏と密接な関係にあり、高額案件とメディア出演の機会を独占していた。伊藤氏の陳述書から、紀藤氏に関する具体的なコメントを以下に表記する:
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伊藤氏の被害弁連排除:「私がホーム・オブ・ハートの被告発人側の弁護人になった途端に、紀藤弁護士が根回しをして、私が被害弁連の会合に参加できないようにしたのです。…『紀藤さんがどうしても伊藤さんを出席させることは許さないというので,仕方がなかった。』ということでした」(2.(1))。
伊藤弁護士の闘い:拉致監禁ビジネスへの反対
伊藤氏は、拉致監禁ビジネスに反対し、以下のような行動で改革を求めた:
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内部批判:「コアな弁護士との打ち合わせの場だったか、個人的な場だったかは忘れましたが、山口広弁護士には『宮村氏のやり方は問題だよ』と疑問をぶつけたことがありました」(2.(3))。山口氏は「辞める前のことには関わらない」と回避。
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宮村氏の排斥:「私は先に述べた被害弁連のコアなメンバー、山口、飯田、渡邉、紀藤の4人の弁護士に、全国弁連から宮村氏を排斥すべきだと提案しました」(2.(5))。
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会計透明化:水茎会の不透明な資金運用を問題視し、会計報告を要求(2.(4))。
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訴訟辞任:「辞任すると同時に、原告全員に宮村氏のことを糾弾する内容の文章を送りました」(2.(4))。
しかし、紀藤氏の根回しや全国弁連の黙認により、伊藤氏は2004年に排除された。
後藤徹氏の闘いと宮村峻の敗訴:最高裁で賠償確定
後藤徹氏は、1995年から2008年まで12年5ヶ月、都内のマンションで監禁され、宮村氏や家族、松永堡智牧師を提訴。本陳述書は、宮村氏の拉致監禁関与を証明する証拠として提出された。東京高裁(須藤典明裁判長)は2014年11月13日、後藤氏の主張をほぼ全面的に認め、兄夫婦と妹に総額2200万円の賠償を命じ、宮村氏にはそのうち1100万円、松永牧師には440万円を連帯して支払うよう判決。宮村氏らは「控訴審判決は違憲」「判決理由に不備がある」と主張し上告したが、最高裁第3小法廷(大橋正春裁判長)は2015年9月29日、「その実質は事実誤認又は単なる法令違反を主張するもの」として上告を棄却。判決が確定し、宮村氏は敗訴した。
全国弁連の黙認と被害の拡大
全国弁連は、宮村氏の拉致監禁を黙認し、献金返還請求が新たな被害者を生む矛盾を放置。「損害賠償金を勝ち取れば、新たな被害者を生むことにつながっていく」(2.(4))。伊藤氏はこの問題を議論したが、紀藤氏や山口氏は向き合わず、拉致監禁ビジネスが続いた。
結論:真相究明と人権保護の必要性