フランスの国際人権弁護士パトリシア・デュバル氏は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する東京地裁の解散命令(2025年3月25日)が、国際法を7つの点で著しく侵害していると厳しく批判している。月刊「正論」6月号や国連への報告書を通じて、デュバル氏はこの司法判断が信教の自由を損ない、国際社会で日本の評価を下げる危険性を訴える。本記事では、デュバル氏の主張を基に、解散命令が引き起こす7つの国際法違反を詳述する。
解散命令の概要とデュバル氏の立場
2025年3月25日、東京地裁は文部科学省の請求に基づき、旧統一教会に対し宗教法人法第81条による解散命令を発令。教団の高額献金や霊感商法が「法令に違反し、公共の福祉を害する」と認定された。旧統一教会は即時抗告し、現在東京高裁で審理が進行中である。
デュバル氏はこの決定に「驚愕し、怒りを覚えた」と述べ、解散命令が国際人権規約や信教の自由の原則に反すると断じる。特に、民事裁判で解決済みの事案を根拠に解散を命じた日本の司法と行政の対応は、国際法を無視する行為だと非難。彼女は、これが7つの国際法違反を構成すると主張する。
デュバル氏が指摘する7つの国際法違反
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焦点: 法律の誤った解釈。裁判所が、賠償履行済みの事案を違法とみなす法的判断の前提が誤っている点。
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問題点: デュバル氏は「賠償が履行された事案は法令違反ではない。国際法でこれを違反とみなすのは誤り」と批判。
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例: 旧統一教会が賠償を終えた訴訟を「違法」と判断。
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焦点: 曖昧な基準の適用。法律の適用範囲を「社会規範逸脱」という主観的基準で不当に広げた点。
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問題点: デュバル氏は「社会規範逸脱は法令違反ではない。曖昧な基準で宗教活動を制限するのは国際人権規約第18条違反」と主張。
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内容: 解決済みの民事事案を宗教法人解散の根拠として使用したこと自体が不当。
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問題点: デュバル氏は「解決済み事案を解散理由に使うのは信教の自由の不当な制限であり、国際人権規約違反」と指摘。
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例: 過去に解決した訴訟を解散の理由に持ち出した。
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内容: 文部科学省が、解決済み事案を基に解散命令を請求。
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問題点: デュバル氏は「『公共の福祉』を名目に宗教団体を標的にするのは、国際法で禁じられた恣意的な権力行使」と非難。
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例: 文科省が解決済み事案を理由に裁判所に解散を求めた。
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内容: 解散の根拠となった32件の民事判決の多くが、ディプログラミング(強制棄教)による不当な訴訟。
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焦点: 訴訟の不正な背景。訴訟の証拠が、拉致・監禁による自由意思の欠如に基づく点に焦点。
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問題点: デュバル氏は「自由意思を奪われた訴訟を解散根拠にするのは国際人権規約第18条違反」と指摘。約88%がディプログラミングに関与。
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例: 信者を監禁して起こした訴訟を解散の証拠に使用。
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内容: 東京地裁が「公共の福祉」や「社会的相当性」といった曖昧な基準で信教の自由を制限。
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例: 「公共の福祉」を理由に、明確な法的根拠なく宗教活動を制限。
ディプログラミング問題と訴訟の背景
デュバル氏は、旧統一教会信者に対するディプログラミングが重大な人権侵害だと訴える。日本では約4,300人の信者が拉致・監禁され、強制的に棄教させられたと報告。彼女は2014年に国連へ意見書を提出し、日本政府への改善勧告を促した。解散命令の根拠となる訴訟が、こうした不正なプロセスに基づいている点は、国際社会で問題視されるべきだと主張する。
国際社会への訴えと日本の課題
デュバル氏は、2022年7月の安倍晋三元首相銃撃事件以前に旧統一教会関連の相談が減少していたことを、ジャーナリスト鈴木エイト氏や弁護士山口広氏の発言を引用して指摘。「解散命令は政治的動機に基づく」とし、日本の司法と行政が国際法を無視していると非難。彼女は国連や国際社会に対し、日本の宗教迫害の実態を訴え続け、解散命令が日米同盟の弱体化や中国共産党との接近を招く危険性を警告する。
結論
パトリシア・デュバル氏は、東京地裁の旧統一教会解散命令が、国際法を7つの点で侵害していると批判する。解決済み事案の誤った認定、不当な拡大解釈、解散根拠の不当性、文科省の権力濫用、東京地裁の違法判決、ディプログラミングによる訴訟の不正、曖昧な基準による自由権制限――これらはいずれも、国際人権規約第18条が保障する信教の自由を損なうものだ。デュバル氏の主張は、宗教と国家の関係や個人の自由と公共の福祉のバランスを巡る議論に国際的視点を投じる。東京高裁での審理や国際社会での対話を通じて、旧統一教会問題の再考が求められる。
参考文献
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月刊「正論」6月号、パトリシア・デュバル氏インタビュー
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Bitter Winter、パトリシア・デュバル氏報告書