2014年7月、広島に住む世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の信者夫婦が、親族とキリスト教関係者によって大阪のマンションに5日間監禁され、信仰を捨てるよう迫られた。事件の首謀者として暗躍したのは、キリスト教神戸真教会の高澤守牧師(故人)と西日本福音ルーテル青谷教会の尾島淳義執事。親族を操り、冷酷な拉致監禁を指南した二人の問題行動とは何か。時系列でその罪を暴く。

2013年4月:高澤・尾島の“脱会ビジネス”の暗躍開始
-
主な登場人物・団体:
-
尾島淳義執事:西日本福音ルーテル青谷教会(神戸市)の執事。「家族会(神戸集会)」を主宰し、拉致監禁の手法を親族に指南。
-
原告夫婦(金森百合絵さん〈仮名・50代〉と夫):家庭連合信者。40代、2児(長女8歳、長男3歳)の両親。
広島市内の家庭連合信者夫婦の両親は、統一教会に反対する中で元信者Kを通じて元信者の姉と接触。彼女が紹介した高澤と尾島の「家族会」に参加する。尾島は、信者を拉致し、マンションに南京錠や金具で閉じ込める手法を指南。高澤は「統一教会信者を数百人脱会させたが、脱出したのは30人」と自慢し、親族の不安を煽りながら拉致を「家族の救済」と偽る。被告両親はこの集会で、原告夫婦を脱会させる決意を固めた。高澤と尾島の心理操作は、親族を犯罪に駆り立てる狡猾なものだった。
2014年5月13日・15日:高澤への300万円送金
-
主な登場人物・団体:
-
高澤守牧師:被告両親から計300万円を受け取る。
-
被告両親(妻の両親、夫の両親):高澤の口座に各150万円を振り込む。
-
被告両親が高澤に300万円を送金。裁判資料によれば、この資金は拉致監禁の準備費用とみられる。高澤は親族の「情愛」を利用し、金銭を巻き上げながら計画を主導。尾島は家族会で具体的な監禁手法を教え、実行の土台を固めた。二人の連携は、犯罪の基盤を着々と築いていった。
2014年6月:高澤・尾島の冷酷な謀議
-
主な登場人物・団体:
高澤と尾島は広島で被告両親や元信者の姉を集め、拉致の役割分担を決定。夫の父と妻の父は高澤の案内で501号室を下見し、玄関の南京錠や窓の金具を確認。尾島は家族会で培った監禁ノウハウを親族に伝授し、脱出不可能な環境を整えた。高澤の指示は、拉致の精密さと残忍さを際立たせる。「これは話合い」と正当化する二人の言葉は、親族を犯罪に巻き込むための巧妙な洗脳だった。
2014年7月14日・15日:高澤・尾島の最終調整
-
主な登場人物・団体:
-
高澤守牧師:電話で元信者の姉に指示。
-
尾島淳義執事:監禁準備を監督。
-
元信者の姉、被告両親:501号室で清掃や物資調達。
-
元信者の姉が501号室で食料や日用品を準備し、高澤に逐一報告。尾島は監禁現場の最終確認を支援。高澤の電話指示は、拉致のタイミングや監視体制を緻密に調整。二人は親族を操り、犯罪の実行を確実なものにしていった。
2014年7月25日:高澤・尾島の計画が最終段階
-
主な登場人物・団体:
-
元信者の姉、元信者姉の夫:501号室に宿泊し、食料を大量購入。
-
高澤守牧師、尾島淳義執事:計画の最終確認。
-
被告両親:ワゴン車の配置を決定。
-
元信者の姉が長期監禁に備え、尾島の指導下で食料を買い込む。高澤は電話で最終確認を行い、元信者姉の夫をワゴン車の監視役に割り当てる。両者の綿密な連携が、拉致の成功を確信させていた。
2014年7月26日:高澤・尾島の計画が実行
-
主な登場人物・団体:
-
高澤守牧師、尾島淳義執事:拉致を遠隔で指揮。
-
原告夫:叔父の危篤を装った嘘でワゴン車に乗せられる。
-
被告夫の母、夫の父(故人)、夫の兄、叔父A、叔母A、叔父B、従兄弟、元信者姉の夫:夫の拉致を実行。
-
原告妻(金森百合絵さん):実家で義弟に組み伏せられ拉致。
-
被告妻の父、妻の母、妻の妹、叔父B、叔母B、親族A・B・C:妻の拉致を実行。
-
ワゴン車運転手(親族でない男):両ルートの運転。
-
午後3時:原告夫は「叔父の見舞い」と騙されワゴン車に乗車。携帯と財布を奪われ、加古川インター付近で頭に布袋を被せられ、両手を縛られる。尾島の指導を受けた元信者姉の夫が監視役として同乗。午後8時、501号室に到着。
午後8時~9時:金森百合絵さんは広島の実家で義弟に組み伏せられ、口をタオルで塞がれ、手足を縛られた上、寝袋に押し込まれる。妻の妹がCDで騒音を掻き消し、携帯や鍵を奪う。高澤の指示で準備されたワゴン車で大阪へ。27日午前1時30分、501号室に到着するが、逃亡を試みて失敗し、全治2週間の打撲を負う。尾島のノウハウが、拉致の残忍さを増幅させた。
2014年7月27日~30日:高澤・尾島の執拗な脱会強要
-
主な登場人物・団体:
-
高澤守牧師:501号室で高圧的な脱会説得を主導。
-
尾島淳義執事:穏やかな態度で説得に加担。
-
原告夫婦:ハンガーストライキやトイレ立て籠もりで抵抗。
-
被告両親、元信者の姉:監視を継続。
-
高澤は「統一教会は悪魔だ」「神体験はサタン」と高圧的に批判。百合絵さんが布団に横になると、「人の話を聞く態度がなっていない!」と激昂。尾島は桜田淳子の記事を読み上げ、毎日数時間にわたり説得を強いる。両者は夫婦の退去要求を無視し、監禁を正当化。百合絵さんは28日に親族の携帯で救出メールを送るが、発覚。高澤は「引っ越しが必要かと思った」と冷酷に反応し、尾島は監禁継続を黙認。ハンガーストライキ中の夫婦に「食べなくても死にません」と高澤が言い放つなど、精神的圧迫は極限に達した。
2014年7月31日未明:解放と高澤・尾島の敗北
-
主な登場人物・団体:
-
原告妻(金森百合絵さん):親族の携帯で110番通報。
-
警察官:501号室に駆けつけ、夫婦を解放。
-
高澤守牧師、尾島淳義執事:脱会強要に失敗。
-
被告両親、元信者の姉:解放を阻止できず。
-
午前2時、百合絵さんが親族の携帯で警察に通報。警察官の到着後、夫婦は救出を求めて叫び、解放される。子供たちは妻の母や妹に預けられていたが、帰宅後、長女は夜泣きやチェーンロックの強迫行為に悩まされる。高澤は解放直後、親族を集めて土下座させ、裁判を起こさないよう懇願。尾島は沈黙を守るが、計画の失敗は明らかだった。
2014年11月:高澤・尾島への刑事告訴
-
主な登場人物・団体:
-
原告夫婦:高澤、尾島、被告両親、元信者の姉らを刑事告訴。
-
広島西警察署:捜査を担当。
-
夫婦は高澤、尾島らを広島西警察署に告訴。だが、2015年に高澤が自殺し、検察は起訴猶予で不起訴。尾島は刑事責任を逃れるが、被害者の怒りは収まらない。
2016年5月16日:民事提訴で高澤・尾島の罪を追及
再び拉致される恐怖から、夫婦は尾島らに約700万円の賠償を求め提訴。請求額は夫348万1600円、妻340万2180円。高澤の死後も、尾島の関与が法廷で焦点となる。
2019年2月:地裁が尾島らの罪を断罪
-
主な登場人物・団体:
-
尾島淳義執事:賠償責任を負う。
地裁は「生命身体に重大な危険を招く悪質な犯罪行為」と断罪。尾島らに夫116万1200円、妻165万2180円の賠償を命じる。尾島の穏やかな態度は不法行為の責任を軽減せず、高澤の手法を継承した罪が明確に。
2020年11月27日:高裁で尾島の敗訴確定
-
主な登場人物・団体:
-
広島高等裁判所(裁判長:三木昌之):一審判決を支持。
-
尾島淳義執事:上告を断念。
-
2025年3月:被害者の闘いと尾島の沈黙
百合絵さんはSNSで体験を公開。「親も高澤や尾島に利用された被害者」と憤る。尾島は事件後沈黙を貫くが、家族会での指導や監禁加担の責任は重い。彼女は親との関係修復を模索するが、「統一教会に入ったことの方が異常」と母に言われ、溝は深い。
後記:高澤守と尾島淳義は、親族の情愛を悪用し、拉致監禁を「救済」と偽る悪質な人権侵害を主導した。子供たちの心の傷、家族の断絶、信仰の自由を踏みにじった罪は、法廷で断罪されたが、完全な正義はまだ遠い。全国拉致監禁・強制改宗被害者の会は、さらなる被害防止を訴える。この闇が二度と繰り返されないために。
(了)