「私たちの信仰は、私たちのアイデンティティです。それを奪われる恐怖と闘っています」。2025年7月12日、東京高裁近くの会見場で、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の信者たちが声を震わせた。教団に対する解散命令をめぐる裁判で、8人の信者が「利害関係参加」を申し出、非公開審理に異議を唱えた。彼らの訴えは、憲法が保障する信教の自由と、マイノリティとしての尊厳を守るための切実な叫びだ。非公開裁判の影で踏みにじられる信教の自由2023年、文部科学省が東京地裁に旧統一教会の解散を求めたことから、この闘いは始まった。2024年10月の地裁判決で解散が認められ、現在、東京高裁で審理が続く。しかし、この裁判は「非訟事件手続法」に基づき、すべて非公開。信者たちは「どんな証拠が提出され、どんな議論が行われているのか、何も知らされず、ただ教会が消えるのを待つしかない」と口を揃える。「文科省の提出書類に捏造の疑いが報じられた。元信者が『そんなことは書いていない』と訴えているのに、なぜ私たちの声は無視されるのか」。会見に登壇した小嶌さん(実名)は、涙をこらえながら訴えた。教団側が公開する断片的な情報しか手元になく、信者たちは「推定有罪」のまま信仰の場を奪われる恐怖に直面している。信教の自由を奪う解散命令の波紋この日の会見では、信者たちが「利害関係参加」を申し出た理由が明かされた。徳永信一弁護士(大阪弁護士会所属、京都大学法学部卒)と佐々木弁護士が中心となり、憲法82条が定める「公開裁判」の原則を根拠に、裁判への参加を求めた。「信者なら誰でも利害関係がある」と徳永弁護士は力強く語る。教団が解散すれば、信者たちは信仰の場を失い、職員は職を失う。そこには、マイノリティとしての生きづらさが色濃く映し出される。「夫婦揃って教団職員です。解散となれば、家族全員が路頭に迷う。転職エージェントに相談したけど、教団職員というだけで門前払いでした」。2世信者の男性は、社会の冷たい視線に打ちのめされた経験を語った。別の女性信者は、3歳の娘を抱えながら涙声で訴える。「子供に信仰を伝えたい。でも、教会がなくなれば、娘が誇りを持てる場所も失われる」。彼女の義母も教団職員で、家族全員が解散の影響を受けるという。2世信者たちの痛みと誇り特に心を打つのは、2世信者たちの切実な声だ。大学4年生の女性は、友人が受けた差別の経験を語った。「大学の授業で、教授が旧統一教会を悪と決めつけたレポートを強要。友人は精神的に追い詰められ、退学せざるを得なかった」。信仰を公にできない現実に、彼女は「自分を否定されるような痛み」を感じると語る。「祖父母から3世代続く信仰なのに、世間は私たちを笑いものにする。誇りを持ちたいのに、それが許されない」。別の2世信者は、教会が「心の寄り所」だと訴えた。子育て中の母親信者は、教会が地域コミュニティの中心であることを強調する。「ベビーラッシュの教会では、ママ友とお下がりを分け合う文化がある。おじいちゃん、おばあちゃんも教会を寄り所に幸せを感じている。この場所がなくなったら、私たちの絆はどうなるの?」。マイノリティ差別への抵抗信者たちの訴えは、マイノリティ差別の問題にも直結する。安倍元首相襲撃事件以降、メディアやSNSでのバッシングが過熱。信者たちは「信仰を隠さざるを得ない」と口を揃える。「教団職員だとバレれば解雇やいじめのリスクがある」「子供が保育園で差別されるのではないかと不安」との声が相次ぐ。ある信者は、転職エージェントに「経歴に旧統一教会があるだけで、リスクが高いと断られた」と明かした。こうした社会の偏見は、信者たちの日常を締め付ける。それでも彼らは顔と名前を出し、声を上げた。「黙っていたら後悔する。教会がなくなれば、私たちのアイデンティティも奪われる」。会見には3万5550人分の署名が提出され、信者や支援者たちの強い意志が示された。彼らの行動は、マイノリティとして生きる誇りを守るための闘いでもある。憲法82条に守られた公開裁判を求めて信者たちが求めるのは、裁判の透明性だ。「非公開だから、どんな証拠で解散が決まったのかわからない。捏造疑惑も放置されたまま」と小嶌さん。徳永弁護士は「宗教団体の解散は重大な人権問題。非公開裁判は憲法82条に明らかに違反する」と断言。著名な憲法学者・小林節氏の意見書も提出し、間もなく国際人権メディア「ビターウィンター」で公開される予定だ。もし申し出が認められれば、信者たちは証拠を閲覧し、教団と同等の立場で主張できる。却下された場合は、最高裁まで異議申し立てを続ける覚悟だ。「公開裁判で真実を明らかにしてほしい。それがなければ、納得できない」と信者たちは訴える。すべてのマイノリティに響く闘い司法記者クラブでの会見は満席で、記者たちは信者たちの思いに強い共感を示した。「非公開裁判はおかしい」という点では、記者や専門家の意見も一致。徳永弁護士は「公開裁判は、宗教を嫌う人にとっても、信者にとっても、すべての国民の権利」と強調した。信者たちの訴えは、旧統一教会だけの問題ではない。憲法が保障する信教の自由、マイノリティが差別なく生きられる社会をどう築くか――それは、日本社会全体への問いかけだ。「子供に誇れる未来を残したい」「信仰を否定されず、堂々と生きられる国であってほしい」。信者たちの切実な願いは、すべてのマイノリティの心に響く。彼らの声は、裁判所の扉を叩き、憲法の精神を呼び覚ますことができるのか。日本の人権と自由の未来がかかった闘いが、今、始まっている。(了)