
この訪問の最大の注目点は、米中首脳会談の実現だ。米財務長官スコット・ベッセント氏は10月14日、「トランプ大統領と習主席の会談は予定通り進んでいる」と述べ、韓国での「サイドミーティング」を示唆した。
両首脳は貿易摩擦の解消を軸に協議する見込みで、トランプ氏は事前のエアフォースワン上での記者会見(10月19日)で、「中国とは良好な関係を築いているが、関税収入が過去最高額だ。貿易赤字を是正し、大豆購入の再開やフェンタニル輸出の停止、レアアース供給の確保を求める」と強調した。韓国政府は、この会談を「地域の平和と繁栄のための橋渡し役」と位置づけ、韓国大統領の李在明(イ・ジェミョン)氏が両首脳と個別に会談する調整を進めている。
韓国政府関係者は、「トランプ氏の訪問は、経済協力、防衛、民生用原子力の議論に焦点を当てる」と説明。韓国は7月の米韓貿易協定に基づき、数兆ウォン規模の米国投資を約束しており、訪問中に新たな覚書(MOU)の署名が検討されている。
しかし、大統領府は一部メディアの「関税MOU署名」報道を否定し、「詳細は調整中」と慎重な姿勢を示した。北朝鮮問題:金正恩委員長との再会は現実味?トランプ氏の韓国訪問は、北朝鮮問題の進展も期待される。トランプ氏は8月の李大統領とのホワイトハウス会談で、「金正恩委員長との再会を望む」と述べ、韓国統一の可能性に言及した。
韓国政府は、APEC期間中に板門店(DMZ)での米朝首脳会談を仲介する構想を浮上させており、習主席の存在が北朝鮮への圧力強化につながる可能性がある。
一方、韓国国防省は10月19日、世界最強クラスの非核弾道ミサイル「玄武-5」の量産開始を発表。射程3,000km以上、弾頭重量8トンのこのミサイルは、北朝鮮抑止を目的とし、年末までに実戦配備される予定だ。
専門家は、「核保有を禁じる国際合意を守りつつ、核潜在力(latency)を高める戦略」と分析。トランプ氏の「米軍撤退」発言が現実化した場合、韓国独自の抑止力が鍵となる。
韓国国内の政治的文脈:李大統領の外交デビュー李在明大統領にとって、今回の訪問は就任後初の本格的な米首脳との会談となる。李氏は2025年4月に前任の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の罷免後、混乱した政局を収拾し、外交面でトランプ氏との「実利優先」の関係を築いてきた。8月の訪米では、トランプ氏のホワイトハウス改装を称賛し、貿易投資の拡大を約束。トランプ氏の事前投稿で「韓国で粛清か革命か」と揶揄されたが、会談は和やかに進んだ。
尹前大統領の戒厳令事件は今なお尾を引いており、保守派はトランプ氏に「尹救済」を求める声もあるが、李政権は「過去の清算を終え、未来志向の外交を」と強調。Xの投稿でも、「トランプは尹派の味方か?」との憶測が飛び交っている。経済・貿易への影響:関税の影トランプ氏の「アメリカ・ファースト」政策は、韓国企業に直撃する可能性が高い。韓国は米国への半導体・自動車輸出大国だが、トランプ氏は中国同様に「貿易不均衡是正」を要求。訪問中に自動車関税の引き上げが議論されれば、現代自動車やサムスン電子の株価に影響が出る恐れがある。一方、韓国は米国への投資拡大で対抗し、民生用原子力協力も推進中だ。韓国での宗教指導者不当拘束問題:米韓首脳会談での解放可能性韓国では、2025年に入り、李在明政権下で保守派宗教団体に対する捜査が強化され、複数の宗教指導者が不当拘束されていると国際的に批判されている。特に、家庭連合の指導者である82歳の*韓鶴子総裁が、尹前大統領の妻に対する贈賄疑惑に関連し、2025年9月22日に逮捕・拘束された事例が象徴的だ。
韓総裁は心臓手術後の回復中で、車椅子姿で裁判所に現れたが、裁判所は拘束を承認。10月10日には、贈賄、横領、違法政治資金提供、証拠隠滅の罪で正式起訴された。
教会側は「政治的報復で、宗教の自由を侵害する」と主張し、国際的な人権団体や米保守派から抗議が相次いでいる。もう一人の該当者は、釜山のセゲロ(세거로 교회)の牧師Son Hyun-bo(ソン・ヒョンボ)牧師。2025年9月24日、選挙法違反(説教中の候補者支持発言)の疑いで拘束され、控訴が棄却された。
ソン牧師は保守派活動家で、李政権批判の集会を主導しており、教会側は「言論の自由と宗教活動の抑圧」と非難。Shincheonji ChurchのLee Man-hee氏も過去の事例があるが、2025年現在は新たな拘束報告はない。
これらの拘束は、尹政権時代の汚職捜査の一環とされるが、トランプ氏は8月の米韓首脳会談前にTruth Socialで「韓国の教会襲撃は粛清か革命か」と投稿し、宗教迫害を非難。
米元下院議長のNewt Gingrich氏ら米保守派も、Han氏の拘束を「82歳の平和活動家への虐待」と批判し、トランプ政権に介入を求めている。
米韓首脳会談での解放可能性
これらの事例は、トランプ氏の宗教自由重視の外交姿勢(例: 過去の国際宗教自由報告書での韓国批判)と一致するため、10月29-30日の訪問で議題化される可能性が高い。トランプ氏は8月会談で既に教会襲撃を問題視しており、韓総裁とソン牧師の解放を人権・同盟関係の条件として提起する公算大。
これらの事例は、トランプ氏の宗教自由重視の外交姿勢(例: 過去の国際宗教自由報告書での韓国批判)と一致するため、10月29-30日の訪問で議題化される可能性が高い。トランプ氏は8月会談で既に教会襲撃を問題視しており、韓総裁とソン牧師の解放を人権・同盟関係の条件として提起する公算大。
李政権は「司法独立」を主張するが、米側の圧力(例: 援助凍結や貿易交渉連動)が強まれば、早期釈放や捜査見直しに応じる可能性がある。ただし、国内政治の対立が激化すれば、会談は緊張を増すリスクも。国際監視団体は「トランプ氏の介入が突破口になる」と期待を寄せている。展望:地域安定の鍵を握る訪問トランプ大統領の韓国訪問は、単なる首脳会談を超え、アジア太平洋地域の勢力均衡を左右するものとなる。米中対立の緩和、北朝鮮問題の進展、日米韓の結束強化――韓国はこれらを一手に引き受ける立場だ。李大統領は「訪問を成功させることで、韓国の国際的地位を高める」と意気込むが、トランプ氏の即興的な発言が波紋を呼ぶリスクも残る。加えて、宗教自由問題の解決が同盟の信頼回復に不可欠となるだろう。