2025年10月22日、富山県で開催された世界平和統一家庭連合(以下、家庭連合)の講演会。第1部で同連合第14代会長・田中富広氏が歴史と貢献を語った後、第2部ではキリスト教牧師の中川晴久氏が登壇。無教会の流れをくむ主の羊クリスチャン教会牧師、東京キリスト教神学研究所判事、キリスト者オピニオンサイト「ソルティ」論説委員、日本キリスト神学院院長を務める中川氏は、かつてカルト問題に携わり、旧統一教会(現・家庭連合)に潜入した経験を持つ異色の人物だ。
元々批判的だった中川氏が、潜入を通じて見出した「真実」を中心に、家庭連合のコミュニティの魅力、拉致監禁被害者の心の傷、信仰回復の道筋を語り、信教の自由の危機を訴えた。会場には田中会長も同席し、メディアの注目を集めた。潜入のきっかけ:アンチから転向した「衝撃の出会い」中川氏は講演冒頭、富山への道中で「土産話」で周囲を和ませつつ、本題へ。2012年、文鮮明総裁没後半年に横浜家庭教会へ潜入した経緯を明かした。当時、元信者(脱会者)から話を聞いていたが、アンチ本の内容と食い違いに疑問を抱き、「潰れてしまえ」という思いを胸に調査を開始。
結果、予想外の「楽しさ」に直面した。「礼拝後、『ちょっと行ってくる』と言うと、『行ってらっしゃい』と送り出される。僕がいなくてもいいんだ、という温かさを感じた」と振り返る。信者たちはおしゃべり好きで、マインドコントロールのイメージとは正反対。家庭を顧みず教会に通うエピソードも披露し、笑いを誘った。他の施設や本部にも「信者のふり」で潜入し、スイカを囲むワイワイとした交流を目撃。「いいコミュニティだ」と実感したという。元信者たちも、キリスト教会で出会うと「通過点の一つ」としか思わず、脱会者のレッテルに違和感を覚えた。中川氏は「アンチ本は外堀からの妄想。裁判資料を基に20倍、30倍に膨らませるだけ」と批判。櫻井教授の著作を挙げ、「何も知らずに書いている」と一刀両断した。
こうした経験から、中川氏は家庭連合を「悪の組織」から「守るべき存在」へ視点を変えるに至った。
日韓の絆が象徴するコミュニティの魅力:本物の「一つになる」証中川氏が特に強調したのは、家庭連合のコミュニティの「和気あいあいとした雰囲気」。初訪問の教会では韓国人宣教師が3割、日本人が7割を占め、韓国人の「頑張ろうぜ!」という熱気が日本人の真面目さと融合。「日本・韓国共同イベントより、教会そのものが証」と断言した。
「キムチと納豆を混ぜて食べるのが健康的」とのエピソードで笑いを交えつつ、「日本人家族のまとまりと韓国人の情熱が、日韓の一致を生む。家庭連合は本物の平和の証」と評価。メディアのデマ(例: ホリエモン氏の「息子」疑惑)を挙げ、「何でも言っていいのか」と憤りつつ、信者たちの「守るべきもの」への結束を称賛。「悪の組織なら光を当てられたら崩壊するが、崩れていない。神様が味方する」と力説した。
中川氏自身、潜入を通じて「交わりに参加できるありがたさ」を感じ、キリスト教会の枠を超えた共感を語った。現役信者や元信者の信仰理解の深さに驚嘆し、「聖書の読み方が見事。生活から湧き出る姿勢が素晴らしい」と絶賛。元信者たちは「培われたものが生きているのに、『騙された』と貶められるのはかわいそう」と、被害者意識の植え付けを問題視した。拉致監禁の闇:心の破壊と放置された被害者たち講演の核心は、拉致監禁問題。家庭連合側が把握する被害者は4,300人超だが、中川氏は「黙って去る人も多く、1万人近くに上る」と推定。自身の教会に通う京都大生の被害者(解放後半年)を例に、「教団すら知らないケースが多い」と指摘した。
中川氏はこれを「心の破壊」と定義。信仰は「神と触れる純粋な部分」であり、それを汚す監禁は「狂うしかない」結果を生む。親の愛を悪用した誹謗中傷、逃げられない支配環境が、心を蝕む。被害者は荒れた生活や憎しみを抱え、教団を訴える側に利用される一方、回復支援は放置されている。「こっち側(訴える側)は悪用、家庭連合側は被害者を野放し」と批判。国家権力の「証拠捏造」(文科省の腐敗)を挙げ、「赤い目ジミス」と揶揄し、信教の自由の危機を訴えた。
愛によって働く信仰:マリアの視点で解釈する回復の道回復の鍵として、中川氏は聖書(ガラテヤ5:2-6)を引用。「愛によって働く信仰だけが大事」との言葉から、律法主義(正統派の優位意識)を超えた愛の視点を提唱。イエス・キリストの母マリアを例に、「父の権威より母の愛が長くイエスを支えた。ヨハネは『愛の使徒』となり、キリスト教を形成した」と説明。
文鮮明総裁の行動も「見方次第で誤解を生むが、愛で解釈せよ」と。韓鶴子総裁の役割を「マリア的」と位置づけ、家庭連合の「信仰期待と実態期待」のギャップを埋める視点として提案。「冗談すら誤解されるが、愛で覆えば回復する。神の愛で心を立て直せ」と締めくくった。信教の自由を守る声:女性リーダーの時代に託す希望中川氏の講演は、家庭連合の「内なる光」を浮き彫りにし、政治・メディアの偏見を鋭く批判。田中会長との対談は予定外のメディア流入で緊張感を増したが、「ワクワクした」と振り返る中川氏の率直さが、会場を温めた。新総理・高市早苗氏の信教の自由擁護を念頭に、「このコミュニティを守れば勝つ」とのメッセージは、10月21日の高裁判理(初公開尋問)と連動し、希望を喚起した。
第2部のパネルディスカッションへ移る中、中川氏の言葉は響いた。「家庭連合は犠牲者。愛の視点で真実を見よ」――信教の自由が問われる今、キリスト教牧師の証言は、新たな対話を生むだろう。(本稿は、中川晴久牧師の講演内容および関連報道に基づく)
