瓜生氏: 「社会は家庭連合信者の声に耳を傾け、対話を通じて教団の変化を促すべき」 藤井氏: 「企業や学校が『信者を差別しない』と宣言すべき」(真宗大谷派)

瓜生氏: 「社会は家庭連合信者の声に耳を傾け、対話を通じて教団の変化を促すべき」 藤井氏: 「企業や学校が『信者を差別しない』と宣言すべき」(真宗大谷派)
2025年3月25日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対し、東京地裁が宗教法人法に基づく解散命令を下した。平均32年前の高額献金霊感商法が「公共の福祉を害する」とされたこの判決は、信教の自由と信者への社会的影響を巡る議論を呼んでいる。真宗大谷派の僧侶の瓜生崇氏と、憲法を教える僧侶・司法書士の藤井昭裕氏が対談し、信者の声に耳を傾ける社会の責任と差別防止の必要性を訴えた。
対談者プロフィール
  • 瓜生崇(うりゅう・たかし)氏
    真宗大谷派の僧侶であり、カルト問題に取り組む研究者。旧統一教会の現役二世信者の声を集めた著書『統一教会・現役二世信者たちの声』を執筆し、教団と社会の対話促進を提唱。

    統一教会・現役二世信者たちの声

  • 藤井昭裕(ふじい・あきひろ)氏
    真宗大谷派覚法寺住職、司法書士九州大谷短期大学憲法を教える非常勤講師。宗教者と法学の視点から、信教の自由と社会の課題について発言。
信教の自由と解散命令の波紋
日本国憲法20条は、信教の自由を「何人に対しても保障」し、信仰、宗教行為、結社の自由を保護する。藤井氏は「内心の自由は国家の干渉を許さない」と強調。旧統一教会の解散命令は法人格の剥奪に留まるが、信者の生活に影響を及ぼす。宗教法人法81条に基づく命令は、過剰な献金や目的逸脱を理由とするが、瓜生氏は「信仰環境への影響は無視できない」と指摘する
二世信者は、教団の過去と現在の狭間で葛藤を抱える。80~90年代の合同結婚式では、日本人女性が韓国人男性と結婚し、文化的格差から苦しんだ事例が目立った。現在は強制性が減ったが、過去のイメージが偏見を助長。解散により、経済基盤の弱体化や韓国本部との関係希薄化が懸念され、信者の孤立が問題となる。
瓜生氏の訴え:信者の声を通じた対話
瓜生氏の著書は、信仰に喜びを見出す信者、改革を望む信者、社会の批判に戸惑う信者の本音を中立的に描く。瓜生氏は「社会は信者を『教団の代弁者』と誤解せず、個人として向き合うべき」と主張。批判は必要だが、信者を排除する風潮は問題の本質を見誤る。信者の中には、過去の献金問題を認めつつ、コミュニティや生きがいを信仰に見出す人もいる。社会が声を無視すれば、信者の孤立と教団の停滞を招く。瓜生氏は「対話で教団の変化を促すのが社会の責任」と訴える。
藤井氏の提言:差別防止の明確な宣言
解散命令は信者への差別を助長するリスクをはらむ。職場や学校で信仰を公表しづらく、隠すストレスが増大。瓜生氏は「信者であることで解雇された事例もある」と明かし、藤井氏は「企業や学校が『信者を差別しない』と宣言すべき」と提言。信教の自由は信仰を公表する権利を含む。大企業が「信仰を理由に差別しない」と方針を掲げれば、信者の社会参加が促進される。学校でも宗教的いじめを防ぐ教育が必要だ。藤井氏は「信者を排除すれば、信教の自由が損なわれる」と警告する。
伝統教団と社会の課題
真宗大谷派など伝統教団も、過去の政治癒着や戦争協力、脱退者への冷遇を反省すべきと両氏は強調。瓜生氏は「新興宗教を『異端』と批判する前に、自身の歴史を振り返る必要がある」と語る。本山への高額献金や「寺を継ぐのが当然」とする文化は、旧統一教会の問題とどう異なるのか。伝統教団の傲慢は信教の自由を損なう。
社会も信者個人を排除せず、教団批判と共存させるべきだ。藤井氏は「宗教はマイノリティとして守られるべき」と述べ、旧統一教会が社会的教団となる可能性を否定しない。対話と支援がその鍵となる。
結論:寛容な社会への第一歩
瓜生氏と藤井氏の訴えは、信教の自由の両面性を示す。信者を守る自由は、差別を防ぐ責任と一体だ。社会は信者の声に耳を傾け、対話で教団の改革を促すべき。企業や学校の差別防止宣言は、信者の孤立を防ぎ、寛容性を高める。旧統一教会問題は、法廷を超え、対話と理解で未来を築く挑戦である。